忘れられない思い出

その女性は2０代前半で急性骨髄性白血病を発症し、数回骨髄移植をされ常に再発しないよう制限のある暮らしを強いられ、その上家庭環境も複雑で近親者に頼れる人がいない方でした。
私は訪問看護師として関わっていましたが、彼女は無口で表情も暗く会話もキャッチボールが難しく「生きてる意味もない」とおっしゃる程でした。
猫が好きでベランダにやってくる野良猫にえさをあげること、読書する時間だけが彼女の癒しのようでした。
私は看護師として経験したことのない状況に何ができるのかたくさん悩みましたが、逃げずに彼女と向き合い続けました。
そんな中まもなく私は異動することとなり、彼女と看護師として関わる機会がなくなりました。
そして昨年の夏彼女が息を引き取ったと聞き、実は彼女が私に手紙を残してくれていたことをスタッフから知ったのです。
私自身日々の訪問で彼女から直接感謝を伝えてもらったことはほぼ記憶にありませんでしたが、手紙には「あなたから大きな愛が言葉にならないくらい伝わって優しい気持ちに私は救われた。
生きてあなたに出会えて良かった。ありがとう」と記してあり、病床で高熱と倦怠感が強い中、懸命に書いて下さった彼女の想いで溢れ胸がいっぱいになりました。

たとえどのようなことがあろうとも、悩みながら逃げずに向き合う自身の看護観を継続していくことは決して間違っていないのだと彼女がそう背中を押してくれた気がします。
この出会いを胸にこれからも看護師として日々歩んでいきたいです。

N

＃左京区　＃往診　＃在宅医療　＃訪問診療
＃緩和ケア　＃神経内科　＃精神科
＃認知症　＃第二中央病院　＃民医連